『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、2018年2月24日に公開された、P.A.WORKS制作の日本のアニメーション映画です。
監督・脚本は、本作が初監督作品となる岡田麿里さん。彼女は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』など、数々の名作アニメの脚本を手がけてきたことでも知られています。
物語の舞台は、10代半ばで外見の成長が止まる不老長寿の種族「イオルフ」が暮らす世界。彼らは人里離れた土地で、「ヒビオル」と呼ばれる布を織りながら、静かに暮らしていました。しかし、その平和な日々は、メザーテ国王の野望によって打ち砕かれてしまうのです。
長寿の血を求めるメザーテ軍の襲撃により、イオルフの里は壊滅。混乱の中、少女マキアは故郷と仲間を失い、たった一人で生き延びることになります。
森をさまようマキアが出会ったのは、盗賊に襲われて孤児となった人間の赤ん坊でした。彼女は赤ん坊をエリアルと名付け、母親として育てていくことを決意するのです。
マキアとエリアルの絆、そして成長
マキアはエリアルを育てるため、人間の村で農場を営むミドの家に身を寄せます。ミドの温かい助けを借りながら、マキアはエリアルを育て、エリアルもマキアを母親として慕っていきます。
しかし、マキアはイオルフであるがゆえに、外見は10代半ばのまま。エリアルが成長していく一方で、マキアは年を取らない。そのため、周囲の目に晒されることを恐れ、マキアとエリアルは町を転々とする生活を余儀なくされるのでした。
やがてエリアルは、自分がマキアの実の子ではないこと、そしてマキアが年を取らないことに疑問を抱き始めます。二人の間には、血の繋がらない親子ならではの葛藤が生まれていくのです。
そんな中、エリアルはマキアの元を離れ、軍隊に入隊することを決意します。マキアはエリアルの決断を受け入れ、彼を見送るのでした。
再びの出会い、そして戦争の影
エリアルと別れたマキアは、かつてのイオルフの仲間であるクリムと再会します。クリムは、メザーテ軍に捕らわれたレイリアというイオルフの少女を救出するため、メザーテと敵対する国を利用して戦争を起こそうとしていました。
マキアはクリムの計画に協力しますが、レイリアは救出を拒否。クリムは絶望し、レイリアと心中しようとするも、メザーテの軍人イゾルに射殺されてしまいます。
一方、エリアルは軍隊で幼馴染のディタと再会し、結婚。二人の間には子供が生まれる予定でした。しかし、戦争の足音が近づき、エリアルは戦場へと赴くことになります。
マキアは戦火の広がるメザーテで、出産を控えたディタと再会。彼女はディタの出産を手伝い、生まれたばかりの子供をエリアルに見せるのでした。
別れ、そして再会
戦争が終結し、エリアルはマキアと再会を果たします。マキアはエリアルに、ディタが無事に出産したことを伝え、別れを告げます。
そして、マキアはメザーテの城で生き残っていたレナトに乗り、レイリアを救出して空へと飛び立つのでした。
数十年後、老いて余命いくばくもないエリアルのもとを、マキアが訪れます。エリアルの最期を看取ったマキアは、静かに家を出て、かつてエリアルを包んだヒビオルを彼の亡骸にかけます。
マキアはエリアルとの日々を思い出し、涙を流しながらも、前を向いて歩き出すのでした。
永遠に紡がれる、愛と命の物語
『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、美しい映像と音楽、そして感動的なストーリーで多くの観客を魅了しました。
岡田麿里監督の繊細な演出、石井百合子さんによるキャラクターデザイン、川井憲次さんによる壮大な音楽など、すべての要素が調和し、忘れられない作品として記憶に残っています。
また、血の繋がらない母と子の物語は、普遍的な親子愛を描くと同時に、人と人との繋がり、そして生きることの意味を問いかけるものでした。
公開当時は、『君の名は。』のヒットもあり、アニメーション映画が大きな注目を集めていた時期でもありました。
『さよならの朝に約束の花をかざろう』もまた、多くの人の心を打ち、アニメ史に残る名作として語り継がれているのではないでしょうか。
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