顕金駅の惨劇と甲鉄城の出発
物語は、蒸気機関が発達した極東の島国・日ノ本を舞台に展開します。人々は「駅」と呼ばれる砦を拠点に生活し、装甲蒸気機関車「駿城」で駅間を往来していました。しかし、人の血肉を求めて蘇る不死の怪物「カバネ」の出現により、平穏な日々は終わりを迎えます。
製鉄と蒸気機関生産が盛んな顕金駅では、主人公の生駒がカバネに対抗する武器「ツラヌキ筒」の研究に没頭していました。妹をカバネに奪われた過去を持つ生駒は、カバネを憎み、独自の武器開発に情熱を注いでいたのです。
そんな中、不思議な少女・無名を乗せた駿城の一つ、甲鉄城が顕金駅に到着します。無名はカバネリと呼ばれる、カバネと人間の間のような存在でした。しかし、その日の夜、カバネに乗っ取られた別の駿城が顕金駅に突入し、駅は大混乱に陥ります。
生駒はカバネに噛まれてしまいますが、自作の器具を用いてカバネウイルスによる脳への侵食を食い止め、自身もカバネリとなります。駅は放棄され、生き残った人々は甲鉄城に乗り込み、カバネからの脱出行が始まるのです。この始まりは、WIT STUDIOの作画力が遺憾なく発揮されたシーンの一つでした。特にカバネの異様な動きや、駅構内のパニック描写は、視聴者に強烈な印象を与えました。
無名との出会いと旅路
甲鉄城での逃避行の中で、生駒は同じカバネリである無名と行動を共にします。無名は高い戦闘能力を持ち、カバネを次々と倒していく姿は、まさにヒロインという言葉がふさわしいものでした。普段は首に枷紐を巻いて力を制御していますが、枷紐を外した時の圧倒的な強さは、視聴者を魅了しました。
しかし、無名は世間知らずな一面もあり、他の乗客との間に摩擦を生むこともありました。生駒はそんな無名と関わる中で、彼女の過去や境遇を知り、次第に心を通わせていきます。
甲鉄城は様々な駅を巡りながら、ワザトリと呼ばれる特殊なカバネや、他の生存者たちとの出会いと別れを経験します。この道中で、生駒と無名は甲鉄城の仲間たちに受け入れられていきます。特に、菖蒲が勝鬨を上げるシーンは、絶望的な状況の中で希望を見出す象徴的な場面として記憶に残っている方もいるのではないでしょうか。
美馬の登場と狩方衆の暗躍
磐戸駅で、生駒たちは美馬率いる狩方衆と合流します。美馬はカバネを狩る精鋭部隊のリーダーとして、民衆から英雄視されていました。無名は美馬を「兄様」と慕い、彼に従っていました。
しかし、生駒は美馬の冷酷な一面に気づき、彼に不信感を抱くようになります。美馬は無名に「弱い奴は死ね」と教え込み、彼女の本名を捨てさせた張本人でした。
狩方衆は独自の目的を持っており、そのために磐戸駅を壊滅に追い込みます。美馬の行動は、甲鉄城の仲間たちとの間に大きな亀裂を生み、物語は新たな局面を迎えます。宮野真守さんが演じる美馬の、優しい顔の裏に隠された狂気は、視聴者に衝撃を与えました。
金剛郭での決戦と別れ
美馬の計画により、甲鉄城の仲間たちは狩方衆に捕らえられ、金剛郭へと連行されます。金剛郭は幕府最大の要害でしたが、美馬の策略によって混乱に陥ります。
生駒は美馬との決戦に挑み、激しい戦いの末に勝利します。しかし、その代償は大きく、多くの仲間を失ってしまいます。特に、逞生が身を挺して生駒を庇うシーンは、涙なしには見られない名場面です。
金剛郭での戦いを経て、生駒と無名は互いの絆を深め、新たな目標を見つけます。それは、カバネのいない世界を取り戻し、再び稲作ができるようにすることでした。
海門決戦とその後
テレビシリーズのその後を描いた劇場版「海門決戦」では、金剛郭崩壊から半年後の世界が描かれます。天鳥幕府を失った日ノ本は、各地でカバネとの戦いを強いられていました。
甲鉄城は飛騨山脈を越えるため、北陸の要衝である海門駅に辿り着きます。そこは北陸連合軍とカバネの戦場となっていました。
海門駅での戦いの中で、生駒たちは新たな敵、駒井景之と対峙します。駒井はかつて海門の城主であり、カバネリとなった悲しい過去を持つ人物でした。
激しい戦いの末、生駒たちは駒井を倒し、海門駅をカバネから解放します。この劇場版では、テレビシリーズで描かれなかったキャラクターたちのその後や、新たな戦いが描かれ、作品の世界観をさらに深く掘り下げていました。特に、無名が新しい武器を使いこなす姿は、成長を感じさせるものでした。
以上が、「甲鉄城のカバネリ」の記録です。この作品は、スチームパンクとゾンビという要素を融合させた独特の世界観、迫力のあるアクションシーン、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす人間ドラマが魅力です。放送当時、WIT STUDIOの作画力や澤野弘之さんの音楽も大きな話題となりました。この記事が、作品を記憶に留めている方々にとって、再び作品世界に触れるきっかけとなれば幸いです。
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