有頂天家族

目次

糺の森に咲く、愉快な騒動の数々

京都の糺の森に暮らす狸の名門、下鴨家。父・総一郎は狸界の頭領「偽右衛門」として狸たちを束ねていましたが、ある年の瀬に人間たちによって狸鍋にされてしまいます。残されたのは、「面白く生きる」をモットーとする三男・矢三郎をはじめとする四兄弟。長男・矢一郎は父の後を継ぎ次期「偽右衛門」を目指し、次男・矢二郎は六道珍皇寺の井戸で蛙として隠居生活を送り、四男・矢四郎は兄たちの間で小さくなっています。

矢三郎は、天狗の赤玉先生の世話を焼きながら、弁天の美しさに魅せられ、夷川家の金閣・銀閣と張り合う日々を送ります。しかし、下鴨家には、父を狸鍋にした人間たちの組織「金曜倶楽部」の影が忍び寄っていました。父の死に隠された真実が明らかになるにつれ、下鴨家は大きな波乱に巻き込まれていくのです。

この物語の中心人物となる矢三郎は、とにかく「面白きことは良きことなり」を体現するような、自由奔放な狸です。櫻井孝宏さんの軽妙な演技が、矢三郎の魅力をさらに引き出していました。能登麻美子さんが演じる弁天の妖艶さも、作品に独特の空気感を与えていましたね。当時のアニメファンは、このキャスティングに大いに盛り上がったものです。

個性豊かな狸たちと、彼らを取り巻く人々

下鴨家の四兄弟は、それぞれ個性豊かです。長男・矢一郎は、諏訪部順一さんの落ち着いた声で、真面目すぎるがゆえにどこか抜けている長男を見事に演じています。吉野裕行さんが演じる矢二郎は、普段はやる気のない怠け者ですが、いざという時には頼りになる存在です。中原麻衣さんが演じる矢四郎は、気が弱く兄たちに振り回されがちですが、その純粋さが物語に温かさを加えています。

彼らを支える母・桃仙は、井上喜久子さんの優しくも豪快な演技が印象的です。宝塚歌劇に心酔し、美青年に化けてはビリヤード場に通うという、ユニークなキャラクターです。そして、石原凡さんが演じた父・総一郎は、回想シーンなどで登場する、威厳とユーモアを兼ね備えた偉大な狸です。

夷川家も、下鴨家とは異なる魅力を持っています。飛田展男さんが演じる早雲は、意地の悪い性格ですが、どこか憎めない存在です。佐倉綾音さんが演じる海星は、矢三郎に辛辣な言葉を浴びせながらも、時には彼らに力を貸す、複雑な感情を抱えた少女です。

京都を舞台に繰り広げられる、奇想天外な物語

本作の大きな魅力の一つは、京都の街並みを舞台に、狸や天狗、人間たちが織りなす奇想天外な物語です。下鴨神社や糺の森、出町桝形商店街など、実在する場所が数多く登場し、京都の風景が美しく描かれています。アニメを見て京都に行ってみたくなった、という人も多かったのではないでしょうか。

特に、作中に登場する「偽叡山電車」は、叡山電鉄とのタイアップ企画として実際にラッピング電車が運行され、大きな話題となりました。これは、アニメツーリズムの先駆けとも言える事例で、後のアニメと地域との連携のモデルケースの一つとなりました。

また、本作は、2013年に文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞しました。これは、作品のクオリティの高さを示すとともに、アニメ作品が芸術として評価される流れを後押しする出来事となりました。

「面白きことは良きことなり」というメッセージ

本作を通して描かれるのは、「面白きことは良きことなり」という、父・総一郎の言葉です。矢三郎はこの言葉を胸に、様々な騒動を巻き起こしながらも、常に周りの人々を楽しませようとします。このメッセージは、視聴者に「人生を楽しむことの大切さ」を教えてくれます。

第1期では、父の死の真相を巡る物語が展開され、下鴨家の絆が描かれます。第2期では、赤玉先生の跡継ぎである二代目の帰朝、矢一郎の偽右衛門選挙への出馬、夷川家の陰謀など、新たな展開が繰り広げられます。

特に、第2期で登場する二代目は、間島淳司さんの飄々とした演技が光る、魅力的なキャラクターです。赤玉先生との因縁や、弁天との対立など、物語に大きな波乱を巻き起こします。

忘れられない、有頂天な日々

「有頂天家族」は、森見登美彦さんの独特の世界観と、P.A.WORKSの美しい映像、そして豪華声優陣の演技が融合した、忘れられない作品です。京都の街並みを舞台に、狸たちが繰り広げる愉快な騒動は、視聴者に笑顔と感動を与えてくれました。

久米田康治さんが手がけたキャラクター原案も、作品の魅力を引き出す大きな要素でした。独特のデフォルメが効いたキャラクターたちは、一度見たら忘れられないインパクトを与えます。

2013年の第1期放送から、2017年の第2期放送を経て、多くのファンに愛され続けている本作。今でも、京都を訪れる際には、作中に登場した場所を巡ってみたくなります。糺の森を歩きながら、下鴨家の狸たちの姿を思い浮かべるのも、また一興でしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次