BANANA FISH

2024年12月19日

物語の発端と「バナナフィッシュ」の謎

物語は1973年のベトナム戦争から始まります。アメリカ兵グリフィン・カーレンリースが突如として同僚に発砲するという事件が起こり、その際に彼が口にした言葉、それが「バナナフィッシュ」でした。この謎の言葉は、グリフィンの弟であるアッシュ・リンクスの運命を大きく左右することになります。

時は移り、現代のニューヨーク。ダウンタウンのストリートギャングのボスとして君臨するアッシュは、コルシカ・マフィアのボス、ディノ・ゴルツィネの命令で銃撃された男から、「バナナフィッシュ」という言葉とカリフォルニアの住所、そしてロケットペンダントを託されます。廃人同然の兄グリフィンが口にする言葉と同じだったことから、アッシュは独自に調査を開始します。

「バナナフィッシュ」は、麻薬と暗示を組み合わせた恐ろしい薬物であり、政界や軍部をも巻き込む巨大な陰謀の鍵を握っていました。アッシュは、取材で知り合った日本人大学生の奥村英二と共に、この陰謀に深く関わっていくことになります。英二の存在は、孤独を抱えて生きてきたアッシュにとって、かけがえのない心の支えとなっていきます。

アッシュと英二は、カリフォルニアでドースン博士という人物と出会い、「バナナフィッシュ」の正体を知ります。それは、複数のアルカロイドを含む薬物であり、完全な薬物暗示を可能にする物質でした。この薬物が、人の心をいとも簡単に操り、破壊してしまうことを、アッシュは身をもって体験することになるのです。

アッシュの反撃とゴルツィネの影

「バナナフィッシュ」の真相に近づくにつれ、アッシュは敵対勢力からの激しい攻撃を受けるようになります。しかし、アッシュは並外れた頭脳と身体能力、そしてカリスマ性を武器に、次々と敵を打ち倒していきます。彼は、ダウンタウンの支配権を巡る抗争を制し、ゴルツィネから大金を奪い取るなど、大胆な行動に出ます。

かつてアッシュに戦闘技術を教えたブランカという人物が登場します。ブランカはかつてKGBに所属していた凄腕の人物で、アッシュにとっても大きな影響力を持つ存在です。当初はゴルツィネの依頼でアッシュと敵対しますが、物語が進むにつれ、アッシュを助ける立場へと変わっていきます。

アッシュは、敵の策略によって精神病院に収容されたり、死亡したという偽のニュースが流されたりするなど、幾度となく絶体絶命の危機に陥ります。しかし、彼はその度に驚異的な力で窮地を脱し、敵を追い詰めていきます。このあたりは、アニメの見どころの一つと言えるでしょう。

アッシュとゴルツィネの対決は、物語の大きな軸の一つです。ゴルツィネはアッシュを自身の後継者として育てようとしますが、アッシュは彼の支配を拒否し、敵対します。二人の間には、愛憎入り混じった複雑な感情が渦巻いており、その関係性は物語に深みを与えています。

最後の戦いと別れ

物語は終盤、アッシュと敵対勢力との最後の戦いを迎えます。「バナナフィッシュ」を巡る陰謀は、政界や軍部をも巻き込む大きな事件へと発展し、多くの犠牲者を出します。アッシュは、仲間たちと協力しながら、敵の陰謀を阻止するために奔走します。

国立精神衛生センターでの戦いは、物語のクライマックスの一つです。アッシュは、ゴルツィネやフォックス大佐といった強敵と対峙し、激しい戦いを繰り広げます。この戦いの中で、「バナナフィッシュ」に関する資料は焼失し、その脅威は終焉を迎えます。

物語の結末は、多くの視聴者の心を揺さぶりました。アッシュと英二は、互いを深く思いながらも、それぞれの道を進むことを選びます。英二が日本へ帰国する日、アッシュは空港へ見送りに行きません。彼は、英二の人生にこれ以上関わってはいけないと考えていたのでしょう。

英二からアッシュに宛てた手紙は、二人の絆の深さを象徴するものです。「君は一人じゃない、ぼくがそばにいる。ぼくの魂はいつも君とともにある」という英二の言葉は、アッシュの心を救い、彼に安らぎを与えます。しかし、その直後、アッシュは凶刃に倒れてしまうのです。

アッシュと英二の絆、そして周囲の人間模様

この物語の中心にあるのは、アッシュと英二の間に育まれた特別な絆です。孤独を抱えて生きてきたアッシュにとって、英二は初めて心を許せる存在でした。英二の優しさや純粋さは、アッシュの心を癒し、彼に生きる希望を与えます。

英二もまた、アッシュを深く理解し、彼を救いたいと願っていました。二人の間には、言葉を超えた強い繋がりがあり、それが物語全体を彩っています。彼らの関係性は、多くの視聴者の心を捉え、様々な解釈を生みました。

アッシュと英二を取り巻く人々も、物語に欠かせない存在です。マックスは、アッシュにとって父親のような存在であり、彼を支え、導きます。ショーターは、アッシュの親友であり、彼の心の拠り所でした。李月龍は、アッシュの宿敵でありながら、彼と似た境遇を持つ複雑な人物です。

彼らの人間関係は、物語に深みと奥行きを与え、視聴者の心を揺さぶります。特に、ショーターが「バナナフィッシュ」によって操られ、アッシュに殺されるシーンは、多くの視聴者に衝撃を与えました。

アニメ化がもたらしたものと当時の反響

『BANANA FISH』のアニメ化は、原作ファンにとって長年の悲願でした。アニメ化が発表された際には、SNSなどで大きな盛り上がりを見せました。特に、ノイタミナ枠での放送ということもあり、アニメファンの期待は高まっていました。

アニメは、原作のストーリーを忠実に再現しながらも、現代を舞台に変更するなど、新しい要素も取り入れました。この変更は賛否両論ありましたが、若い世代の視聴者にも作品が受け入れられるきっかけになったと言えるでしょう。

アニメの音楽を担当したのは、大沢伸一です。彼の音楽は、作品の世界観を効果的に表現しており、アニメの評価を高める要因となりました。オープニングテーマやエンディングテーマは、アニメの人気を牽引し、多くのファンに愛されました。

声優陣の演技も素晴らしかったです。内田雄馬さんのアッシュ、野島健児さんの英二をはじめ、各キャラクターにぴったりの声優が起用され、物語に命を吹き込みました。特に、アッシュの苦悩や葛藤、英二の優しさや強さを表現した演技は、視聴者の心を強く打ちました。

アニメ放送中は、SNSで多くの感想や考察が飛び交いました。特に、アッシュと英二の関係性や物語の結末については、様々な議論が繰り広げられました。この作品が、放送当時、大きな話題を呼んだことの証左と言えるでしょう。アニメを通じて初めて『BANANA FISH』に触れたという人も少なくなかったのではないでしょうか。