1984年、昭和59年は、世相を反映する様々な言葉が生まれ、流行しました。それらの言葉は、当時の社会現象や人々の関心事を鮮やかに映し出しています。この記事では、特に話題となった10個の流行語を選び、その背景や意味を掘り下げて解説します。これらの言葉を通して、1984年という時代を追体験し、記憶を呼び起こす旅に出かけましょう。
オシンドローム
1983年から1984年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「おしん」は、驚異的な視聴率を記録し、社会現象となりました。主人公おしんの波乱万丈な生涯は、多くの人々の心を捉え、「オシンドローム」という言葉が生まれました。これは、おしんのような苦労や忍耐を強いられる状況や、おしんの生き方に共感する心情を表す言葉として広まりました。海外でも放送され、国際的な流行語にもなったのです。
まるきん・まるび
イラストレーターの渡辺和博氏が提唱した「まるきん・まるび」は、当時流行していたDCブランド(デザイナーズ&キャラクターブランド)の商品を身につけている人を、「まるきん」(お金持ち)、「まるび」(普通の生活者)と区別する言葉です。この言葉は、消費社会の隆盛と、若者たちの間で広まっていたブランド志向を象徴していました。
くれない族
TBSのテレビドラマ「くれない族の反乱」から生まれた「くれない族」は、「何かをしてくれない」と他人に依存する人々を指す言葉です。特に、主婦層を中心に広がっていたこの傾向は、ドラマを通して社会に広く認識されるようになりました。この言葉は、現代社会における依存体質や人間関係の問題点を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
疑惑
「疑惑」という言葉は、「週刊文春」が報じた「疑惑の銃弾」というキャンペーン記事から広まりました。ロサンゼルスで起きた殺人事件をめぐるこの報道は、大きな反響を呼び、「疑惑」という言葉は、事件や不祥事を表す言葉として定着しました。メディアによる報道が社会に大きな影響を与えることを示した出来事と言えるでしょう。
す・ご・い・で・す・ネッ
タレントの所ジョージ氏がテレビ番組でよく使っていた「す・ご・い・で・す・ネッ」は、相手を褒め称える際に使われる言葉です。独特の抑揚とユーモラスな言い回しが人気を集め、広く一般に浸透しました。この言葉は、当時のテレビ文化とタレントの影響力を示す好例と言えるかもしれません。
教官!
アイドル歌手の堀ちえみさんが主演したドラマ「スチュワーデス物語」で使われた「教官!」というセリフは、訓練生が教官を呼ぶ際の言葉です。ドラマの大ヒットとともに、このセリフも流行語となりました。この言葉は、ドラマの舞台となった航空業界への憧れや、厳しい訓練に耐える姿への共感を象徴していたと言えるでしょう。
鈴虫発言
中曽根康弘首相(当時)が、参議院予算委員会で「日本の知識水準はアメリカに比べると、まだまだ鈴虫の音を聞き、コオロギの音を聞くという程度において劣っている」と発言したことが、「鈴虫発言」として話題になりました。この発言は、日本の教育水準や文化に対する議論を巻き起こし、流行語となりました。
スキゾ・パラノ
京都大学助手の浅田彰氏が著書『構造と力』で用いた「スキゾ・パラノ」は、精神分析の用語で、分裂病質と妄想症を意味します。この難解な言葉が流行語となった背景には、当時の思想界や文化界におけるポストモダニズムの影響があったと考えられます。
特殊浴場
トルコ大使館参事官のイルハン・オウス氏が、トルコ風呂(現在のソープランド)を「特殊浴場」と表現したことが、この言葉が広まるきっかけとなりました。この言葉は、性風俗産業を婉曲的に表現する言葉として使われるようになり、社会問題として議論を呼ぶことになりました。
千円パック
森永製菓が発売した「千円パック」は、当時としては高額な価格設定のお菓子詰め合わせです。この商品がヒットしたことで、「千円パック」という言葉が流行語となりました。これは、消費者の間で高価格帯の商品への関心が高まっていたことを示していると言えるでしょう。
まとめ
1984年の流行語を振り返ると、ドラマやテレビ番組、政治家の発言、社会現象など、様々な要素が言葉の流行に影響を与えていたことが分かります。これらの言葉は、当時の社会の空気や人々の意識を反映しており、時代を映す鏡と言えるでしょう。流行語は、単なる言葉の流行にとどまらず、その時代を理解するための重要な手がかりとなるのです。これらの言葉を記憶に留めることは、過去を振り返り、未来を考える上で、有益な情報となるのではないでしょうか。