1989年流行語で振り返る一年

1989年、昭和から平成へと時代が変わり、日本は新たな時代を迎えました。この年は、消費税導入、リクルート事件など、社会に大きな影響を与える出来事が相次ぎ、世相を反映した様々な流行語が生まれました。今回は、そんな1989年を象徴する流行語を10個選び、その背景や意味合いを掘り下げてご紹介します。これらの言葉を通して、当時の社会や人々の意識を垣間見ることができるでしょう。

目次

セクシャル・ハラスメント

1989年の新語部門で金賞を受賞した「セクシャル・ハラスメント」、通称「セクハラ」。この言葉が広く認知されるきっかけとなったのは、弁護士の河本和子氏が職場におけるセクハラ問題を告発したことでした。それまで曖昧にされていた性的嫌がらせが明確に問題視されるようになり、社会に大きな衝撃を与えました。この言葉の登場は、女性の権利意識の高まりを示すとともに、職場環境における倫理観の変化を促す契機となったと言えるでしょう。

オバタリアン/オバタリアン旋風

流行語部門で金賞を獲得した「オバタリアン」は、漫画家・堀田かつひこ氏の漫画に登場する、行動力旺盛で図々しい中年女性を指す言葉です。土井たか子氏(当時の日本社会党委員長)がこの言葉を引用したことで、広く一般に浸透しました。この言葉は、当時の社会における中年女性のイメージを反映していると言えるかもしれません。しかし、一方で、従来の女性像にとらわれない、力強い女性の姿を描き出しているとも考えられます。

ケジメ

リクルート事件の影響で、政治家や官僚の倫理観が問われる中、「ケジメ」という言葉が注目を集めました。「ケジメをつける」という表現は、責任を取る、落とし前をつけるという意味合いで使われ、事件の責任追及や倫理観の欠如に対する批判を表す言葉として広まりました。この言葉は、社会全体の倫理観への関心の高まりを示す象徴的な言葉と言えるでしょう。

24時間タタカエマスカ

栄養ドリンク「リゲイン」のCMキャッチコピーとして大流行した「24時間タタカエマスカ」。高度経済成長期を経て、バブル景気に沸く日本社会において、長時間労働が当たり前となっていた状況を象徴する言葉です。この言葉は、当時の日本人の働き方を表すとともに、過労や健康問題への警鐘ともなっていたかもしれません。

Hanako

マガジンハウスから創刊された女性情報誌「Hanako」。この雑誌は、東京の最新トレンドやグルメ情報を発信し、若い女性を中心に大きな支持を集めました。「Hanako族」という言葉も生まれ、ライフスタイルや消費行動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

DOD/デューダ(する)

人材派遣会社(現パーソルキャリア)が使用したキャッチコピー「DODA(デューダ)」は、「Do+Do+Action」の略で、「行動する」という意味合いを持ちます。転職やキャリアアップを前向きに捉える風潮を反映した言葉と言えるでしょう。

まじめ×ゆかい

川崎製鉄(現JFEスチール)の企業広告で使用された「まじめ×ゆかい」は、企業の真面目さとユーモアを表現したキャッチコピーです。企業イメージの向上を図る意図があったと考えられます。

濡れ落葉

定年退職後、家庭で居場所がなく、妻に疎まれる夫を「濡れ落葉」と表現しました。樋口恵子氏が提唱したこの言葉は、当時の社会における男性の定年後の生活や夫婦関係の問題点を浮き彫りにしました。

イカ天

TBSの音楽番組「イカすバンド天国(イカ天)」は、アマチュアバンドブームの火付け役となりました。「イカ天」から数多くのプロミュージシャンが誕生し、音楽シーンに大きな影響を与えたと言えるでしょう。

こんなん出ましたけど~

占い師・泉アツノ氏の決め台詞「こんなん出ましたけど~」は、テレビ番組で広く知られるようになりました。独特の語り口と占いの結果を示す際のユーモラスな表現は、多くの視聴者に親しまれました。

まとめ

1989年は、昭和から平成への改元、消費税導入、リクルート事件など、歴史の転換点となる出来事が多くありました。今回ご紹介した流行語は、当時の社会情勢や人々の意識、文化などを色濃く反映しています。これらの言葉を振り返ることで、当時の日本の姿が鮮やかに蘇ってくるのではないでしょうか。言葉は時代を映す鏡と言われますが、まさに1989年の流行語は、そのことを雄弁に物語っていると言えるでしょう。これらの言葉は、単なる一時的な流行ではなく、その時代を象徴する文化遺産として、後世に語り継がれていくことでしょう。

これらの言葉を通して、当時の社会や人々の価値観、そして時代の空気を感じ取っていただけたなら幸いです。

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