1992年は、バブル崩壊後の社会の変動、人々の意識の変化が色濃く反映された年でした。流行語は、その時代を映す鏡と言われますが、この年もまた、世相を鮮やかに切り取った言葉たちが数多く生まれました。今回は、そんな1992年を代表する流行語を10個選び、その背景や意味合いを掘り下げてご紹介します。
きんさん・ぎんさん
1992年の流行語大賞に輝いたのは、百歳を超えた双子の姉妹、成田きんさんと蟹江ぎんさんでした。通販生活やダスキンのCMに起用されたことをきっかけに、たちまち国民的な人気者となりました。長寿社会の象徴として、多くの人々に笑顔と元気を与えたお二人の存在は、まさに時代のアイコンと言えるでしょう。お二人の愛称は、老若男女問わず広く親しまれ、温かい気持ちを日本中に広げました。
冬彦さん
TBS系ドラマ「ずっとあなたが好きだった」に登場する、佐野史郎さん演じる冬彦さんのキャラクターは、大きな話題を呼びました。マザコン気味の言動や、独特の暗い雰囲気が視聴者の間で強烈な印象を残し、「冬彦さん」は、ある種の男性像を表す言葉として定着しました。ドラマ自体も高視聴率を記録し、社会現象とも言えるほどのブームを巻き起こしました。
カード破産
バブル経済の崩壊後、クレジットカードの利用が拡大する中で、返済に行き詰まる人が増加しました。「カード破産」は、こうした社会現象を象徴する言葉として、広く使われるようになりました。安易な消費行動への警鐘として、この言葉は重い意味を持っていたと言えるでしょう。
もつ鍋
福岡県発祥のもつ鍋は、1992年に全国的なブームとなりました。手軽に作れる家庭料理として、また飲食店でも人気を集め、多くの人々に親しまれました。もつ鍋ブームは、食文化のトレンドを語る上で欠かせない出来事の一つです。
複合不況
バブル崩壊後、景気の低迷が長期化する中で、「複合不況」という言葉が注目を集めました。これは、様々な要因が複雑に絡み合って不況が深刻化している状況を表しており、当時の経済状況を的確に表現した言葉と言えるでしょう。
9K
「9K」とは、職場での人間関係の希薄さや孤独感を表現する言葉です。「孤独、 अकेला(ekelaa)(インドのヒンディー語で「一人」の意味)、 खाली(khaalee)(同じくヒンディー語で「空虚」の意味)、 коку (kok)(ロシア語で「孤独」の意味)、空、から、껍데기(kkeopdegi)(韓国語で「抜け殻」の意味)、虚、からっぽ」の頭文字を並べたもので、当時の社会における人間関係のあり方を反映していると言えるかもしれません。
謝長悔長
バブル崩壊後、企業のトップが謝罪する場面が多く見られました。「謝長悔長」は、こうした状況を揶揄する言葉として生まれました。謝る社長、後悔する会長という構図は、当時の社会風刺として広く受け入れられたのです。
ほめ殺し
相手を過剰に褒めることで、逆に相手を困惑させたり、皮肉を込めた表現として使われる「ほめ殺し」も、この年に広まった言葉の一つです。人間関係における微妙な駆け引きや、言葉の裏に隠された意図を表現する言葉として、興味深いと言えるでしょう。
ねぇ、チューして
俳優の唐沢寿明さんがCMで発した「ねぇ、チューして」というセリフは、多くの人々の記憶に残っています。このセリフは、当時の若者を中心に流行し、親密なコミュニケーションの一つの表現として定着しました。
上申書
企業内で、上司に意見や要望を伝えるために作成される文書である「上申書」も、1992年の流行語として挙げられます。組織におけるコミュニケーションのあり方や、個人の意見表明の難しさを象徴していると言えるかもしれません。
まとめ
1992年の流行語を振り返ってみると、バブル崩壊後の社会の状況、人々の意識の変化が色濃く反映されていることが分かります。経済の低迷、人間関係の変化、消費行動の変化など、様々な側面から時代を映し出していると言えるでしょう。これらの言葉は、単なる一時的な流行ではなく、その時代を象徴する文化的な遺産として、後世に語り継がれていくことでしょう。言葉を通して時代を振り返ることは、過去を理解し、未来を考える上で重要な意味を持っているのではないでしょうか。これらの流行語は、当時の社会を写し出す鏡であり、後世にその時代を伝える貴重な資料と言えるでしょう。