鋼の錬金術師

目次

原作とは異なるもう一つの物語

当時、『鋼の錬金術師』は月刊「少年ガンガン」で連載中で、原作漫画の連載終了の目処は立っていませんでした。そのため、アニメは原作とは異なる独自のストーリー展開をしていったのです。原作の雰囲気はそのままに、アニメオリジナルのキャラクターや設定、そして衝撃的な結末が用意されていました。今でこそ、原作に忠実な『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の方が有名かもしれませんが、2003年版アニメは、当時を知る者にとっては特別な存在なのです。

賢者の石とホムンクルス、そして兄弟の絆

物語は、エドワードとアルフォンスのエルリック兄弟が、亡くなった母親を蘇らせようとして人体錬成という禁忌を犯してしまうところから始まります。その代償として、エドは左脚を、アルは身体全体を失ってしまうのです。エドは自らの右腕を代償に、アルの魂を鎧に定着させることに成功しますが、失ったものを取り戻すため、彼らは賢者の石を求める旅に出ます。

旅の途中で、エルリック兄弟は賢者の石にまつわる陰謀や、人造人間ホムンクルスとの戦いに巻き込まれていきます。原作とは異なるホムンクルスの設定や、彼らが抱える悲哀、そしてエルリック兄弟との対比が、このアニメ版ならではの魅力と言えるでしょう。そして、兄弟の絆、仲間との友情、そして生と死といったテーマが、物語に深みを与えていました。

土曜の夕方はハガレンの時間だった

2003年当時、『鋼の錬金術師』は毎日放送制作・TBS系列で、毎週土曜日の夕方6時に放送されていました。あの頃は、『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』といった人気アニメが同じ時間帯に放送されており、まさにアニメ黄金期だったと言えるのではないでしょうか。毎週土曜日が来るのが待ち遠しくて、テレビの前に釘付けになっていた人も多いはずです。

アニメの主題歌も大きな話題となりました。ポルノグラフィティの「メリッサ」、L’Arc〜en〜Cielの「READY STEADY GO」、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」など、そうそうたるアーティストが楽曲を提供し、どれもアニメの世界観と見事にマッチしていました。エンディングテーマも、北出菜奈の「消せない罪」やCrystal Kayの「Motherland」など、名曲揃いでしたね。

国内外で高い評価を獲得

2003年版『鋼の錬金術師』は、その完成度の高さから、国内外で数々の賞を受賞しました。平成16年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品、第9回アニメーション神戸作品賞・テレビ部門、そしてアメリカのAMERICAN ANIME AWARDSではベスト長編シリーズ賞などを受賞しています。

監督の水島精二さんは「過去関わったどの作品よりも反響は大きかった」と語っており、原作の荒川弘さんもアニメの制作に理解を示していました。しかし、原作とは異なるストーリー展開や登場人物の扱われ方から、賛否両論もあったのも事実です。それでも、2003年版アニメは、多くのファンに愛された作品であり、アニメ史に残る名作と言えるのではないでしょうか。

今も色褪せない記憶

2003年版『鋼の錬金術師』は、単なる原作のアニメ化に留まらず、独自の解釈とオリジナリティで多くのファンを魅了しました。原作とは異なるもう一つの『鋼の錬金術師』として、今もなお語り継がれる作品です。あの頃、毎週欠かさずアニメを見ていた人も、そうでない人も、もう一度この作品に触れてみてはいかがでしょうか。きっと、忘れかけていた何かを思い出させてくれるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次