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経済とディールの交錯:物語の骨子

『C』は、2011年春にフジテレビのノイタミナ枠で放送されたオリジナルアニメ作品です。監督は中村健治、シリーズ構成は高木登が務め、斬新な映像表現と複雑なストーリーで話題を呼びました。副題には『THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL』とあり、まさに「魂と可能性の支配する金」が物語の核心を成しています。

物語の舞台は近未来の日本。ミダスマネーと呼ばれる謎の資金が経済を裏で動かし、社会には不安が蔓延していました。主人公は大学生の余賀公麿。彼はひょんなことから金融街と呼ばれる異世界に足を踏み入れ、未来を担保に金を得て戦うアントレプレナーとなります。

金融街で行われるのは「ディール」と呼ばれるマネーゲームです。アントレはアセットと呼ばれるパートナーと共にディールに挑み、ミダスマネーを奪い合います。しかし、ディールは単なるゲームではありません。その結果は現実世界に影響を及ぼし、人々の生活や未来を大きく変えてしまうのです。

公麿は当初、ディールに戸惑いを感じていました。安定した生活を望み、公務員を目指していた彼にとって、未来を賭けるという行為は受け入れがたいものでした。しかし、ディールを通して様々なアントレと出会い、彼らの生き様や思想に触れる中で、公麿の心境にも変化が生まれていきます。特に、椋鳥ギルドの代表である三國壮一郎との出会いは、公麿に大きな影響を与えました。

三國は、ディールを現実世界への影響を最小限に抑えるための手段と考えていました。彼の思想に共感した公麿は、椋鳥ギルドに所属し、ディールを通して現実世界を守るために戦うことを決意します。しかし、ディールを続けるうちに、公麿は金融街のシステムや三國のやり方に疑問を抱き始めます。未来を犠牲にして今を維持するという方法に、彼は納得できなかったのです。

本作は、放送当時、経済をテーマにしたアニメとして注目を集めました。難しい経済用語や概念が登場する一方で、それらを分かりやすく表現する工夫が凝らされており、経済に興味を持つきっかけになったという視聴者もいました。また、独特な色彩感覚や幾何学的なデザインなど、中村監督ならではの斬新な映像表現も話題となりました。

アントレとアセット:未来を具現化した存在

ディールにおいて重要な役割を果たすのが、アントレのパートナーであるアセットです。アセットはアントレの未来を具現化した存在と言われており、それぞれ個性的な容姿と能力を持っています。

主人公・公麿のアセットは真朱。赤い服を着た少女の姿で、炎を操る能力を持っています。真朱は短気な性格で、当初は優柔不断な公麿を叱咤激励することが多かったのですが、ディールを重ねるうちに公麿を深く理解し、強い絆で結ばれていきます。

三國壮一郎のアセットはQ。青い髪の少女の姿をしており、その姿は三國の妹・貴子を模しているとされています。Qは茫洋とした雰囲気で、どこか達観したような口調で話します。また、彼女は強大な力を秘めており、ディールにおいて重要な役割を果たします。

ジェニファー・サトウのアセットはジェルジュ。巨大な狼の姿をしており、高い戦闘能力と隠蔽能力を持っています。ジェルジュは後にジェニファーから公麿に託され、公麿の新たな力となります。

アセットは単なる戦闘力ではなく、アントレの精神的な支えでもあります。公麿と真朱の関係は、アントレとアセットの関係を超えた愛情で結ばれており、物語の重要な要素の一つとなっています。放送当時、真朱の可愛らしさや公麿との掛け合いは、視聴者の間で人気を集めました。

ディールの行方:未来を賭けた戦い

ディールは、アントレ同士がミダスマネーを賭けて戦うマネーゲームです。アントレはアセットにミダスマネーを投資することで、フレーションと呼ばれる特殊能力を発動させることができます。フレーションにはミクロ、メゾ、マクロの3種類があり、投資額に応じて効果が強くなります。

ディールの勝敗は、最終的な総資本増加率によって判定されます。勝者は敗者が攻撃に投資したミダスマネーを獲得することができますが、敗者は現実世界に何らかの影響を受けます。その影響は、些細なものから人生を大きく左右するものまで様々です。

物語が進むにつれて、ディールはより激しさを増していきます。アントレたちはそれぞれの目的のために戦い、未来を賭けてマネーを奪い合います。公麿もまた、ディールを通して成長していきますが、同時に葛藤も深めていきます。彼は、ディールの意味や、未来を賭けることの是非について、深く考えるようになるのです。

金融街の真実:Cの連鎖と輪転機

物語の核心に迫るにつれて、金融街の真実が明らかになっていきます。金融街は、人々の未来をミダスマネーに変換する場所であり、その中心には輪転機と呼ばれる巨大な機械が存在しています。

輪転機は、ダークネスカードを持つアントレプレナーのみが使用することができ、未来と引き換えに莫大なミダスマネーを生み出すことができます。三國は、日本を襲うCと呼ばれる現象に対抗するために、輪転機を使用しました。

Cとは、金融街の資金がなくなり、人々の未来がミダスマネーに変換し尽くされた時に発生する現象です。Cが発生すると、金融街と、その影響範囲にある人間や土地が消滅してしまいます。これは「市場閉鎖」とも呼ばれ、作中ではカリブとシンガポールの金融街がCによって消滅しています。また、Cは連鎖を起こし、他の金融街や現実世界にも影響を及ぼす可能性があります。

公麿は、三國のやり方に疑問を抱きながらも、Cの連鎖を止めるために戦います。彼は、未来を犠牲にするのではなく、未来を買い戻すことを決意し、輪転機を逆回転させるという危険な賭けに出ます。

未来への選択:公麿の決断

物語の終盤、公麿は三國との最後のディールに挑みます。それは、未来を巡る二人の思想の衝突でもありました。激しい戦いの末、公麿は三國に勝利し、輪転機を逆回転させることに成功します。

未来を買い戻した結果、現実世界は大きく変化しました。日本円は崩壊し、ドル経済に移行するなど、様々な影響が現れましたが、人々はそれなりに幸せそうに生きていました。公麿の決断は、間違っていなかったのです。

『C』は、未来とは何か、お金とは何か、そして人間にとって本当に大切なものは何かを問いかける作品です。斬新な映像表現や複雑なストーリーは、視聴者に深い印象を与え、放送後も様々な議論を呼びました。特に、未来を担保にするという斬新な設定は、視聴者の間で大きな話題となりました。本作は、今見返しても色褪せない魅力を持つ作品と言えるでしょう。

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