おおかみこどもの雨と雪

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物語の始まりと家族の誕生

物語は、主人公である花の視点から語られます。彼女は19歳の女子大生で、勉学に励む日々を送っていました。そんなある日、大学の講義で出会った「彼」に心惹かれます。彼はどこかミステリアスな雰囲気を纏っており、花は次第に彼に惹かれていくのです。

やがて二人は恋人同士となり、花は彼から驚くべき告白を受けます。彼は人間とニホンオオカミの血を引く「おおかみおとこ」だったのです。普通ならば戸惑うであろうこの事実に、花は彼の全てを受け入れます。それは、彼への深い愛情があったからに違いありません。

二人は共に暮らし始め、やがて二人の間に子供たちが生まれます。雪の日に生まれた長女は「雪」、雨の日に生まれた長男は「雨」と名付けられました。彼らは人間の姿とオオカミの姿、二つの顔を持つ「おおかみこども」として誕生したのです。

都会の一隅で、花と彼は子供たちの秘密を守りながら、慎ましくも幸せな日々を送っていました。しかし、幸せな時間は長くは続きません。雨が生まれて間もなく、彼は不慮の事故で命を落としてしまうのです。残された花は、二人の「おおかみこども」を一人で育てることになります。

田舎での暮らしと子供たちの成長

夫を失った花は、都会での子育てに限界を感じ、自然豊かな田舎への移住を決意します。子供たちがオオカミの姿になっても周囲に迷惑をかけないように、人里離れた古民家を選びました。この古民家は、富山県の風景をモデルに描かれており、公開後には多くのファンが訪れる場所となりました。当時、聖地巡礼という言葉も広まっており、本作の舞台を訪れるファンも少なくなかったでしょう。

田舎での生活は、都会とは全く異なるものでした。花は農業を始め、自給自足の生活を目指します。近所の人々との交流を通して、農業の知識や生活の知恵を学び、次第に地域に溶け込んでいきます。

子供たちは田舎の自然の中で、それぞれの個性を伸ばしていきます。活発で好奇心旺盛な雪は、外で遊ぶことを好み、オオカミとしての本能をむき出しにする場面もありました。一方、内気で繊細な雨は、家の中で過ごすことを好み、本を読んだり絵を描いたりすることが好きでした。

子供たちの成長と共に、花は様々な困難に直面します。オオカミこどもならではの育児の難しさ、周囲との関係、そして子供たちの将来への不安など、多くの課題を抱えながらも、花は力強く子供たちを育てていくのです。

それぞれの道と母の想い

雪が小学校に入学する頃から、子供たちの間に変化が現れ始めます。雪は周囲の友達との関係を意識し、人間の女の子として振る舞うことを選びます。一方、雨は学校に馴染めず、山に惹かれるようになります。

雨は山で一匹の狐と出会い、彼を「先生」と呼び、山の生き方を学び始めます。この狐は、山の生態系を象徴する存在として描かれており、雨の成長に大きな影響を与えます。

ある日、雪と雨は互いの生き方を否定し、激しい喧嘩をしてしまいます。雪は人間として生きることを、雨はオオカミとして生きることをそれぞれ選び、二人の間には深い溝が生まれてしまうのです。

大雨の日、雨は山に入り、オオカミとして生きていくことを決意します。花は雨を追いかけますが、途中で足を滑らせて意識を失ってしまいます。目を覚ますと、そこにはオオカミの姿になった雨がいました。雨は花を安全な場所に運び、再び山へと戻っていきます。

雨の力強い遠吠えを聞いた花は、彼の決意を受け入れ、心の中で「しっかり生きて」とエールを送ります。このシーンは、母と子の絆、そして子供の成長と自立を描いた本作の重要な場面の一つと言えるでしょう。

草平との出会いと雪の決意

雪の小学校に転校生、草平がやってきます。雪は彼との出会いを通して、自分が人間として生きていくことを改めて意識するようになります。草平は雪の秘密を知ってもなお、彼女を受け入れます。

ある日、雪は草平に自分が「おおかみこども」であることを告白します。草平は驚くことなく、「最初から気づいていた」と告げます。このシーンは、雪にとって大きな転機となります。自分の秘密を受け入れてくれる存在がいることを知り、彼女は人間として生きる決意を固めるのです。

草平との関係を通して、雪は人間社会の中で生きていくための自信と勇気を 얻ていきます。彼女は中学校に進学し、寮生活を送ることを選びます。それは、人間として自立していくための第一歩でした。

未来への旅立ちと花のまなざし

物語の終盤、雪は中学校に進学し、寮生活を始めます。雨は山でオオカミとして生きていくことを選びました。花は一人、古民家で静かに暮らしています。

子供たちはそれぞれの道を選び、花のもとを巣立っていきました。花は子供たちの成長を喜びながらも、少し寂しさを感じているかもしれません。しかし、彼女は子供たちの未来を信じ、温かく見守っています。

本作は、母と子の絆、子供の成長と自立、そしてそれぞれの生き方を選択することの大切さを描いた物語です。花の子育てを通して描かれる普遍的なテーマは、多くの観客の心を捉えました。細田守監督作品として、「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続く注目作として公開前から話題を集めていたことも、記憶に新しいところです。

子供たちが成長していく中で、花は一人の母親として、そして一人の人間として成長していきます。彼女の強さ、優しさ、そして愛情深さは、観る人の心を揺さぶります。本作は、子供を持つ親はもちろん、全ての人にとって心に響く作品と言えるでしょう。

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