物語の始まりと舞台設定
ドーワー王国は、13の自治区によって構成される地方自治制を敷く国です。かつて12の地区が一斉にクーデターを起こし、各地区の自治が認められたという過去を持ちます。その後、警察、消防、医療機関などを傘下に置く巨大統一組織・ACCAが設立され、各自治区のACCA支部を束ねています。
物語の中心となるのは、ACCA本部監察課です。監察課は各自治区のACCA支部が適正に業務を遂行しているかを監視する役割を担っています。この監察課の副課長を務めるのが、主人公のジーン・オータスです。「もらいタバコのジーン」という異名を持つ彼は、飄々とした態度で各自治区を巡り、視察を行っています。
ジーンは、高額課税が課されているタバコを人から貰うことが多く、それが異名の由来となっています。この「もらいタバコ」という描写は、当時、ジーンのキャラクター性を象徴するものとして話題になりました。また、タバコを通じた各地区の人々との交流は、物語に奥行きを与える要素となっていました。
物語は、ACCA本部で「監察課の廃止」が決定したという知らせから動き出します。突然の決定に戸惑う本部局員たちをよそに、ジーンはいつもと変わらず視察へと出発します。しかし、この視察を通して、彼はACCA支部における不正と、それを隠蔽しようとする本部監察課員の存在を突き止めるのです。
この不正の発覚は、監察課の解体に拍車をかけると思われましたが、逆に監察課の重要性を再認識させる結果となります。不正を見抜いたのもまた監察課だったからです。この展開は、組織の内部を描く群像劇としての本作の特徴を際立たせるものでした。
主人公ジーン・オータスと周囲の人物
ジーン・オータスは、ACCA監察課の副課長として、13区すべての支部を短時間で視察するという任務をこなしています。乗り物が苦手な課長に代わっての任務ですが、彼はそれを苦にすることなく、淡々と業務を遂行しています。
彼の妹、ロッタ・オータスも物語の重要な登場人物です。兄と共にバードン中心街のセレブマンションの管理人室に住む彼女は、兄や兄の友人であるニーノと仲良く過ごしています。スイーツ好きで天真爛漫な性格のロッタは、物語に明るい彩りを添えています。
ジーンの友人であるニーノは、元探偵のフリー記者として活動しています。チョコレート好きで、ジーンとは高校時代からの付き合いです。しかし、彼の正体はACCA内務調査課の覆面局員「クロウ」であり、グロッシュラー長官の指令でジーンを監視しています。
このニーノの二重性は、物語にサスペンスの要素をもたらしています。ジーンとニーノの友情、そしてニーノの任務という対比は、物語の重要な軸の一つです。特に、ニーノがジーンを監視しながらも、友人として彼を気遣う描写は、多くの視聴者の心を掴みました。
オウルは、監察課の課長を務めています。乗り物酔いがひどいため、地方への視察は全てジーンに任せています。彼の正体は、ジーンとロッタの母親であるドーワー王家第二王女シュネーの側近だったアーベントです。この事実は、物語の後半で明らかになり、大きな驚きをもたらしました。
ACCAを巡る陰謀と各地区の個性
物語が進むにつれて、監察課廃止の裏に隠された陰謀が明らかになっていきます。グロッシュラー長官は、ジーンにとある疑いを抱き、ニーノに調査を命じます。この調査を通して、ドーワー王国を揺るがす大きな陰謀が浮かび上がってくるのです。
ドーワー王国は13の自治区で構成されており、それぞれ異なる文化や特色を持っています。首都バードンをはじめ、農業が盛んなファーマス、貴族と平民の格差が激しいスイツ、カジノで賑わうヤッカラなど、各地区の描写は物語の魅力を高める要素となっています。
特に、スイツ区は、他区との交流が厳しく制限されており、独特の閉鎖的な社会を形成しています。このスイツ区の描写は、当時の視聴者の間で、本作の世界観を象徴するものとして話題になりました。
また、フラワウ区は、資源が豊富で財政は豊かですが、どんなに優秀なACCA本部局員もこの区に赴任すると、自信を喪失してしまうという、ある種の「魔境」として描かれています。このフラワウ区の描写も、本作独特の世界観を際立たせる要素と言えるでしょう。
ACCA5長官とクーデター未遂事件
ACCAには、各地区を代表する5人の長官が存在します。スペード、パスティス、グロッシュラー、グレゴリー・パイン、リーリウムです。彼らはACCAの運営に関与しており、物語の重要な役割を担っています。
特に、グロッシュラー長官は、監察課廃止を強く主張していましたが、後に存続派に転じます。彼の行動は、物語の展開に大きな影響を与えます。また、リーリウム長官は、ACCAを利用したクーデターを企てます。
このクーデター未遂事件は、物語のクライマックスであり、ジーンやモーヴ本部長の活躍によって阻止されます。この事件を通して、ACCAの組織としてのあり方や、ドーワー王国の政治体制が大きく変化することになります。
当時、このクーデター未遂事件の展開は、視聴者の間で大きな議論を呼びました。特に、リーリウム長官の野望や、グロッシュラー長官の真意など、各キャラクターの思惑が複雑に絡み合う展開は、物語の魅力を高める要素となっていました。
物語の結末とその後
クーデター未遂事件の後、ACCAは大きな変革を迎えます。5長官制度は廃止され、モーヴ本部長がACCAの最高責任者となります。グロッシュラーは、モーヴの要請で長官職に留まりますが、本部長の相談役という名誉職となります。
ジーンは、監察課の課長に就任し、ACCAの改革に尽力します。ニーノは、内務調査課を辞職し、カメラマンに転職します。オータス兄妹の存在は王家に公認され、国王が兄妹と会うことが自由となります。
物語の結末は、各キャラクターがそれぞれの道を進みながらも、良好な関係を維持していることを示しています。特に、ジーンとニーノの友情は、物語を通して描かれた重要なテーマの一つであり、多くの視聴者の心に残るものでした。
本作は、組織の中で生きる男たちの群像劇として、緻密な人間関係や、落ち着いた雰囲気、そして深みのあるストーリーが魅力です。当時、派手な演出やアクションが主流だったアニメの中で、本作のような作品は異彩を放っており、多くの視聴者に新鮮な驚きを与えました。今見返しても、その魅力は色褪せることはないでしょう。
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