天気の子

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雨の東京と少年少女の出会い

物語は、離島から家出した高校生、森嶋帆高が東京にやってくるところから始まります。家出の理由は明確には語られませんが、彼は都会で一人、生活を送ろうとしていました。しかし、現実は厳しく、仕事も見つからず、所持金も底をつきかけていました。そんな中、フェリーで知り合ったライターの須賀圭介と再会し、彼の事務所で働くことになります。

当時の東京は、記録的な長雨に見舞われていました。連日降り続く雨は、人々の心にも重くのしかかっているようでした。そのような中で、「100%の晴れ女」という都市伝説が囁かれるようになります。

帆高が須賀の事務所で働き始めて間もなく、彼は歌舞伎町で以前出会った少女、天野陽菜と再会します。彼女こそが、祈ることで一時的に天気を晴れにできる「晴れ女」だったのです。陽菜は弟の凪と二人暮らしで、生活は楽ではありませんでした。帆高は彼女に「晴れ女」の力を利用してビジネスをすることを提案し、三人は協力して仕事を始めます。

この「晴れ女」ビジネスは口コミで広がり、次第に多くの人々から依頼を受けるようになります。人々は、大切なイベントの日や、少しでも晴れ間が見たい時に、陽菜の力を借りました。この頃、SNSなどでは「晴れ女」の噂が広まり、映画公開と相まって、実際に「もし晴れ女がいたら」と想像する人が多くいたようです。

能力の代償と別れ

しかし、「晴れ女」の力には代償がありました。陽菜は能力を使うごとに体が徐々に透明になっていき、「天気の巫女が人柱になる」という伝承が現実のものとなっていきます。当初、陽菜はそのことに気づいていませんでしたが、夏美から見せられた気象神社の神主の動画を通して、自身の身に起こっていることを知ります。

物語中盤、陽菜の身体は完全に消えてしまい、彼女は空へと連れ去られてしまいます。帆高は、大切な人を失った悲しみと、自分の無力さに打ちひしがれます。この展開は、観る者に大きな衝撃を与え、物語は一気にシリアスな様相を呈していきます。

このあたりで、帆高と陽菜の関係性が大きく変化します。当初はビジネスパートナーのような関係でしたが、互いを必要とするかけがえのない存在へと変わっていきます。それは、帆高が陽菜を救うために奔走する姿に表れています。

東京の変化と帆高の決意

陽菜が消えた後も、東京の雨は止むことなく降り続きます。街の一部は水没し、人々の生活にも大きな影響が出ていました。これは、気候変動問題への言及とも取れ、当時の環境問題への関心の高まりを反映しているとも言えるでしょう。

帆高は、陽菜を救うために、警察の追跡をかわしながら、彼女が「晴れ女」の力を得た代々木の廃ビルを目指します。友人である須賀や夏美、凪の助けを借りながら、彼はついに屋上の神社へとたどり着きます。

当時のインターネット上では、「ラストシーンはどうなるのか」といった議論が交わされていました。ハッピーエンドを望む声もあれば、現実的な結末を予想する声もあり、様々な憶測が飛び交っていました。

再会と新たな始まり

帆高は神社の鳥居をくぐり、空へとワープします。そこで彼は、雲の中に囚われた陽菜を見つけ、彼女を救い出すことに成功します。しかし、その結果、東京の雨はさらに激しくなり、街はさらに水没していきます。

帆高の行動は、社会的な責任と個人の感情の狭間で揺れる現代人の姿を描いているとも解釈できます。彼は、東京の街よりも、陽菜との再会を選んだのです。

物語の終盤、帆高は保護観察処分を受け、故郷に戻ります。そして、数年後、大学生になった彼は再び東京へ向かいます。水没した変わり果てた東京で、彼は陽菜と再会を果たします。

このラストシーンは、賛否両論を呼びました。街の犠牲を伴ってまで個人的な幸せを選んだことへの批判や、逆に、困難を乗り越えて再会を果たしたことへの感動など、様々な意見がありました。

音楽と映像が織りなす世界

『天気の子』を語る上で欠かせないのが、RADWIMPSが担当した音楽です。前作『君の名は。』に続き、本作でも彼らの音楽は物語と一体となり、作品の世界観をより深く表現していました。主題歌の一つである「愛にできることはまだあるかい」は、映画のテーマを象徴する楽曲として、多くの人に愛されています。当時の音楽チャートでも上位にランクインし、映画のヒットを後押ししました。

また、新海誠監督ならではの美しい映像表現も、本作の見どころの一つです。特に、雨の描写や、雲の描写は息を呑むほど美しく、観る者を作品の世界へと引き込みます。空の描写は、時間の経過や天候の変化を繊細に描き出し、物語の感情的な高まりを表現していました。

本作は、少年少女の切ない恋物語であると同時に、現代社会が抱える問題にも目を向けた作品と言えるでしょう。気候変動、若者の孤独、社会の不条理など、様々なテーマが織り交ぜられ、観る者に様々な感情を抱かせます。この作品が公開された当時、SNS上では、これらのテーマについて多くの議論が交わされました。

このように、『天気の子』は、音楽、映像、物語、そして社会的なテーマが融合した、記憶に残る作品です。

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