2024年8月30日に公開されたアニメーション映画「きみの色」。山田尚子監督の繊細な演出と、吉田玲子の脚本、そしてサイエンスSARUによる美しいアニメーションが織りなす、青春の光と影を描いた物語です。あの時、映画館で見た感動を、もう一度振り返ってみませんか。
あらすじ
長崎県を思わせる海辺の街。キリスト教系女子高校に通う日暮トツ子は、人と出会う時にそれぞれ固有の「色」が見えるという、特別な感覚を持っています。ある日、トツ子は「きれいな色」を感じた同級生の作永きみと出会いますが、きみは突然学校を去ってしまいます。
きみを探し求めるトツ子は、街の古書店で偶然彼女に再会。そこへ、高校生の影平ルイが現れ、トツ子ときみがバンドを組んでいると勘違いしたことから、3人は一緒に音楽を奏でることに。
毎週日曜日は、街外れの島の廃教会で練習を重ね、オリジナル曲作りにも励みます。トツ子はきみへの憧れを太陽系の惑星にたとえた歌を、ルイは自身の葛藤を込めた曲を制作。しかし、きみには退学を隠していること、ルイには医師である母の後を継ぐべきかという悩みがあり、3人の間には、それぞれの秘密と葛藤が渦巻いていました。
そんな中、トツ子は修学旅行を欠席し、きみを寄宿舎の自室に招き入れます。しかし、それが学校関係者に発覚し、2人は奉仕活動と反省文を課せられてしまいます。
クリスマスには、トツ子ときみはルイの住む島を訪れますが、天候が悪化し島に足止めされてしまいます。廃教会で一夜を明かすことになった3人は、それぞれの悩みを打ち明け、互いを理解していくのでした。
魅力的なキャラクターたち
- 日暮トツ子: 人の色が見えるという特殊な能力を持つ、少し内気な女の子。心の動きを繊細に表現した鈴川紗由さんの演技も素晴らしかったですね。
- 作永きみ: トツ子の同級生で、聖歌隊のメンバー。美しい歌声とミステリアスな雰囲気を持つ少女です。髙石あかりさんの透明感のある声が、きみの繊細な心情を表現していました。
- 影平ルイ: 離島に住む高校生で、音楽好き。母の後を継いで医師になるべきか葛藤しています。木戸大聖さんが演じる、クールな中にも優しさを持つルイの姿に惹きつけられた人も多いのではないでしょうか。
- シスター日吉子: トツ子の通う学校のシスターで、トツ子の良き理解者。新垣結衣さんが演じる穏やかな声が、物語に温かさを添えていました。
個性豊かなキャラクターたちが、それぞれの「色」を輝かせながら、互いに影響し合い成長していく姿は、多くの人の共感を呼んだのではないでしょうか。
音楽が彩る物語
「きみの色」の魅力の一つは、音楽が物語に深く関わっていることです。Mr.Childrenが手掛けた主題歌「in the pocket」は、映画の世界観を見事に表現した名曲として話題になりましたね。
劇中では、トツ子、きみ、ルイの3人がそれぞれ作曲したオリジナル曲が披露されます。きみ役の髙石あかりさんが歌う「反省文 ―善きもの美しきもの真実なるもの―」や「あるく」、そして3人で歌う「水金地火木土天アーメン」は、それぞれが抱える心情を歌い上げた、印象的な楽曲でした。
特に、「水金地火木土天アーメン」は、3人の心情とリンクした歌詞と、キャッチーなメロディーが話題となり、YouTubeで公開されたアニメーションPVや、キャストによる「踊ってみた動画」も人気を集めました。
これらの音楽が、物語をさらに豊かに彩り、感動を深めていたことは間違いありません。
美しい背景描写
長崎県でロケハンが行われたということもあり、作中には美しい風景が数多く登場します。
トツ子ときみが通う学校のモデルとなったのは、兵庫県西宮市の神戸女学院大学岡田山キャンパス。歴史を感じさせる重厚な建物が、物語に深みを与えていました。
また、ルイが音楽の練習に使う廃教会のモデルは、長崎県五島市の旧五輪教会堂。教会の静寂と、そこに響き渡る音楽のコントラストが印象的でした。
これらの美しい風景描写は、物語の世界観をより深く理解する上で重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。
公開当時の反響
「きみの色」は、公開前から山田尚子監督の最新作として大きな注目を集めていました。公開後は、繊細な心理描写や美しい映像表現、そして音楽の魅力が高く評価され、多くの観客を魅了しました。
また、新垣結衣さんの声優としての出演も話題となり、映画ファンのみならず、幅広い層から注目を集めました。
興行収入も好調で、映画ランキングで上位にランクインするなど、商業的にも成功を収めました。
「きみの色」は、青春時代の葛藤や心の成長を、繊細なタッチで描いた作品として、多くの人々の心に響いたのではないでしょうか。
コメント