2000年代、インターネットが普及し、携帯電話がガラケーからスマートフォンへと移り変わる中で、静かに、そして力強く私たちの心を掴んだ作品がありました。Keyが贈る恋愛アドベンチャーゲーム「CLANNAD」。そして、それを原作としたアニメーション作品です。ここでは、ゲームの記憶は薄れてしまったけれど、アニメの感動は忘れられないあなたのために、CLANNADの世界を再び紐解いていきましょう。
光坂高校の坂道で
物語は、私立光坂高等学校を舞台に、バスケットボールを諦め、どこか投げやりな日々を送る岡崎朋也と、演劇部再建を目指すか弱く守ってあげたくなるような少女、古河渚の出会いから始まります。桜が舞い散る坂道での出会いは、朋也の心を、そして私たちの心を、柔らかく揺さぶるものでしたね。
あの頃、街にはまだレンタルビデオ店が軒を連ね、プリクラ機の前には女子高生の長蛇の列ができていました。放課後は友達とカラオケに行ったり、ゲームセンターで遊んだり、時にはファストフード店で語り合ったり…。CLANNADの登場人物たちも、そんな日常を過ごしていたかもしれません。
朋也は渚や、個性豊かなヒロインたちとの交流を通して、少しずつ変わっていきます。藤林杏の元気いっぱいの笑顔、一ノ瀬ことみの不思議な言動、坂上智代の凛とした姿、伊吹風子の無邪気な行動…。それぞれのヒロインとの物語は、甘酸っぱく、そして切ない青春の1ページを私たちに見せてくれました。
誰もが抱える心の傷
CLANNADの魅力は、恋愛模様だけではありません。登場人物たちが抱える心の傷や葛藤、そして家族の温かさを丁寧に描いている点も、多くの人の共感を呼んだ理由でしょう。朋也と父親の確執、ことみの両親との別れ、智代の家族の再生…。それぞれの物語は、私たち自身の経験と重なり、涙を誘います。
作中には、幻想世界と呼ばれる不思議な空間が登場します。少女とロボットの物語は、一見本編とは関係ないように思えますが、実はCLANNAD全体のテーマを象徴する重要な役割を担っているのです。
卒業、そして新たな始まり
高校生活という限られた時間の中、朋也はかけがえのない仲間たちと出会い、成長していきます。そして、卒業。CLANNADは、高校を卒業した朋也と渚のその後を描いた「AFTER STORY」へと続きます。
朋也と渚は結婚し、娘の汐を授かります。しかし、幸せな時間は長くは続きません。渚は汐を出産後、この世を去ってしまうのです。深い悲しみに暮れる朋也。汐を両親に預け、彼は逃げるように故郷を離れます。
AFTER STORYでは、朋也の苦悩と成長、そして家族の再生が描かれます。汐との再会、父親との和解、そして渚の死を受け入れるまでの葛藤…。朋也の姿は、私たちに「生きる」ということの意味を問いかけてきます。
あの頃を彩る音楽
CLANNADの世界を語る上で欠かせないのが、麻枝准氏が生み出す美しい音楽たちです。オープニングテーマ「メグメル 〜cuckool mix 2007〜」、エンディングテーマ「だんご大家族」をはじめ、数々の名曲が物語を彩り、感動をより深めてくれます。
特に印象的なのは、幻想世界で流れるBGM「Ana」ではないでしょうか。どこか懐かしく、そして切ないメロディーは、CLANNADの世界観を見事に表現しています。
もうひとつの世界
アニメ版CLANNADでは、本編とは異なる「もうひとつの世界」が描かれています。智代編、杏編は、テレビ放送ではされませんでしたが、DVDに収録され、ファンの間で話題となりました。if の物語を楽しむのも、CLANNADの醍醐味と言えるでしょう。
CLANNADは、単なる恋愛アニメではありません。友情、家族愛、そして人生の喜びと悲しみを描いた、普遍的な物語です。あの頃、CLANNADに心を揺さぶられた人も、初めてCLANNADに触れる人も、この物語を通して、何かを感じ取ってもらえたら幸いです。
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