1990年流行語で振り返る一年

1990年、平成2年は、激動の時代でした。バブル経済の終焉、東西冷戦の終結、そして湾岸危機など、世界情勢は大きく変動しました。日本国内でも、消費文化の隆盛や新しいライフスタイルの登場など、社会の様々な側面で変化が見られました。そんな時代を鮮やかに彩ったのが、流行語です。人々の心を捉え、世相を反映する言葉たちは、時代を映す鏡と言えるでしょう。今回は、1990年を代表する流行語を10個選び、その背景や意味、当時の社会現象との関わりなどを詳しく解説していきます。これらの言葉を通して、1990年の時代を追体験してみましょう。

目次

ファジィ

「ファジィ」は、1990年の新語部門金賞を受賞した言葉です。もともとは工学用語で、「あいまいな」「不確定な」という意味を持ちます。家電製品などに導入されたファジィ制御技術が話題となり、一般にも広く知られるようになりました。

ファジィ制御は、人間のあいまいな判断をコンピュータで再現する技術です。例えば、洗濯機の水量を洗濯物の量に応じて自動的に調整したり、エアコンの温度を室温の変化に応じてきめ細かく制御したりすることが可能になります。この技術は、家電製品の使いやすさや快適性を向上させるものとして注目を集めました。

「ファジィ」という言葉自体も、あいまいな状況や曖昧さを許容する考え方を表す言葉として、様々な分野で使用されるようになりました。当時の社会には、はっきりとした答えや明確な基準を求めるのではなく、ある程度の曖昧さを受け入れる柔軟な考え方が求められていたのかもしれません。

“ブッシュ”ホン

「“ブッシュ”ホン」は、1990年の新語部門銀賞を受賞しました。これは、当時のアメリカ大統領ジョージ・H・W・ブッシュ(パパブッシュ)が頻繁に電話で連絡を取っていたことに由来する言葉です。

湾岸危機を背景に、ブッシュ大統領は各国首脳と緊密に連携を取り、事態の収拾に奔走しました。その際に、電話を多用していたことから、「“ブッシュ”ホン」という言葉が生まれ、国際政治の舞台裏を垣間見せる言葉として流行しました。

この言葉は、国際情勢の緊張感や、首脳外交の重要性を象徴していたと言えるでしょう。また、情報伝達手段としての電話の重要性を改めて認識させるきっかけにもなったかもしれません。

オヤジギャル

「オヤジギャル」は、1990年の新語部門銅賞を受賞しました。これは、男性的な趣味や行動をする若い女性を指す言葉です。

例えば、酒豪であったり、競馬などのギャンブルを好んだり、男性的な言葉遣いをしたりする女性が「オヤジギャル」と呼ばれました。この言葉は、従来の女性像にとらわれない、新しいタイプの女性像の登場を示していたと言えるでしょう。

「オヤジギャル」という言葉は、女性の社会進出が進む中で、女性のライフスタイルや価値観が多様化していく様子を反映していました。また、ジェンダー Rolesに対する意識の変化も示唆しているのではないでしょうか。

アッシーくん

「アッシーくん」は、女性のために車で送り迎えをする男性を指す言葉です。女性を「足」として利用される男性の悲哀を表現した言葉として、当時話題となりました。

この言葉は、当時の若者文化における男女関係の一つの側面を浮き彫りにしています。バブル経済期における消費文化の隆盛と、男女間の関係におけるパワーバランスの変化が背景にあったのかもしれません。

「アッシーくん」という言葉は、現代社会においても、男女関係における様々な問題点を考える上で、示唆に富む言葉と言えるでしょう。

ちびまる子ちゃん(現象)

「ちびまる子ちゃん(現象)」は、1990年の流行語部門金賞を受賞しました。これは、漫画『ちびまる子ちゃん』のアニメ化が大ヒットし、社会現象となったことを指しています。

『ちびまる子ちゃん』は、小学3年生のまる子と、その家族や友人たちとの日常を描いた作品です。そのほのぼのとした作風と、昭和の風景を懐かしく描いた描写が、幅広い世代から支持を集めました。

「ちびまる子ちゃん(現象)」は、アニメが単なる子供向けの娯楽ではなく、幅広い世代に支持される国民的なコンテンツとなったことを示しています。また、昭和への郷愁や、家族の温かさを求める社会のニーズを反映していたのかもしれません。

バブル経済

「バブル経済」は、1990年の流行語部門銀賞を受賞しました。これは、1980年代後半から1990年代初頭にかけての、日本の異常な好景気を指す言葉です。

株価や地価が急騰し、人々は消費を謳歌しました。しかし、1990年代に入るとバブルは崩壊し、日本経済は長期の低迷期に入ります。

「バブル経済」という言葉は、好景気の裏に潜むリスクや、経済の変動の激しさを教えてくれる教訓として、後世に語り継がれることでしょう。

一番搾り

「一番搾り」は、キリンビールが発売したビールの商品名です。1990年の流行語部門銅賞を受賞しました。

「一番搾り」は、麦芽の一番搾り麦汁だけを使用したビールとして、その製法が話題となりました。CMに人気女優を起用したこともあり、大ヒット商品となりました。

この言葉は、消費者の間で、商品の品質や製法への関心が高まっていたことを示しています。また、CMなどの広告戦略が、商品の人気に大きな影響を与えることを改めて認識させる出来事だったと言えるでしょう。

パスポートサイズ

「パスポートサイズ」は、ソニーが発売した小型ビデオカメラ「ハンディカム」の愛称です。1990年の流行語部門銅賞を受賞しました。

小型で持ち運びやすいハンディカムは、家庭用ビデオカメラの普及に大きく貢献しました。旅行やイベントなどで手軽に動画を撮影できるようになったことで、人々のライフスタイルに変化をもたらしました。

「パスポートサイズ」という言葉は、小型化・軽量化が進む家電製品のトレンドを象徴しています。また、ビデオカメラが特別な機器ではなく、一般家庭に普及していく過程を示していると言えるでしょう。

チョベリバ

「チョベリバ」は、「超ベリーバッド」の略語で、女子高生の間で流行しました。非常に悪い状況や気分を表す言葉として使われました。

この言葉は、若者言葉の代表的な例と言えるでしょう。短縮形や略語を用いることで、仲間内でのコミュニケーションを円滑にする効果があったのかもしれません。

「チョベリバ」は、時代とともに変化していく若者言葉の一例として、言語の変化や流行の移り変わりを研究する上で、興味深い事例と言えるでしょう。

オヤジ

「オヤジ」は、中高年の男性を指す言葉ですが、1990年には、それまでの「お父さん」というニュートラルな呼び方とは異なり、やや否定的なニュアンスを含む言葉として使われるようになりました。

例えば、時代遅れの考え方をする人や、若い世代の文化を理解できない人を「オヤジ」と呼ぶようになりました。この言葉は、世代間のギャップや、価値観の多様化を反映していると言えるでしょう。

「オヤジ」という言葉は、現代社会においても、世代間のコミュニケーションや相互理解を考える上で、重要なキーワードの一つと言えるかもしれません。

まとめ

1990年の流行語を振り返ってみると、当時の社会情勢や文化、そして人々の意識が色濃く反映されていることが分かります。バブル経済の終焉、新しい技術の登場、若者文化の隆盛など、様々な要素が絡み合い、時代を彩る言葉たちが生まれてきました。

これらの言葉は、単なる一時的な流行ではなく、時代を記録する貴重な資料と言えるでしょう。後世の人々がこれらの言葉を通して、過去の時代を理解し、歴史を学ぶきっかけとなるかもしれません。流行語は、まさに時代を映す鏡なのです。

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