物語の発端と第1クールの展開
1972年、アポロ計画の最中に月面で発見された古代文明の遺産「ハイパーゲート」。これは地球と火星を結ぶ扉でした。その後、火星で発見された古代火星文明のテクノロジー「アルドノア」は、火星と地球の間に新たな緊張を生み出します。火星は「ヴァース帝国」を建国し、地球との間で幾度となく衝突を繰り返します。
1999年には、月が砕ける大惨事「ヘブンズ・フォール」が発生。これにより地球と火星の関係は決定的に悪化し、2000年に休戦協定が結ばれるものの、両者の間には深い溝が残りました。そして2014年、休戦から10年以上が経過した現代。和平交渉の一環として、ヴァース帝国の皇女アセイラム・ヴァース・アリューシアが地球を訪問することになります。
アセイラムの地球訪問は、平和への希望の光となるはずでした。しかし、歓迎パレード中に発生したテロによって、その希望は打ち砕かれます。アセイラムは生死不明となり、火星はこれを地球からの宣戦布告とみなし、地球への大規模な侵攻を開始します。この侵攻により、世界各地で激しい戦闘が繰り広げられることになります。
物語の中心となるのは、3人の若者です。地球側の主人公、界塚伊奈帆は、冷静沈着な高校生。彼は持ち前の分析力と操縦技術で、次々と現れる火星のカタフラクト(人型機動兵器)を撃破していきます。火星側の主人公、スレイン・トロイヤードは、アセイラムに恩義を感じる地球人の少年。彼はアセイラムを救うために奔走しますが、ヴァース帝国という複雑な環境の中で苦悩します。そして、物語の鍵を握るアセイラムは、テロの混乱の中で伊奈帆と出会い、行動を共にすることになります。
第1クールでは、伊奈帆とスレイン、そしてアセイラムそれぞれの視点から物語が描かれます。地球と火星の戦いは激化の一途をたどり、多くの犠牲者が出ます。特に、第1クール終盤の衝撃的な展開は、放送当時大きな話題となりました。虚淵玄氏がストーリー原案を担当していたこともあり、シリアスで容赦のない展開は予想されていましたが、それでも視聴者に大きな衝撃を与えたのは間違いありません。
第2クールの展開と新たな局面
第1クールから19ヶ月後。地球と火星の戦いは依然として続いていました。ザーツバルムの揚陸城で消息不明となったアセイラムですが、火星側の月面基地で演説を行う姿が描かれます。しかし、それはアセイラムの異母妹、レムリナ・ヴァース・エンヴァースが変装した姿でした。本物のアセイラムは、スレインによって保護され、昏睡状態にありました。
一方、地球側では、宇宙での作戦のために戦艦デューカリオンの発進準備が進められていました。そんな中、伊奈帆は左目を失いながらも、新たな力を得て戦列に復帰します。彼の左目には、アナリティカルエンジンという特殊な装置が埋め込まれていました。これにより、伊奈帆はさらに高い分析能力を発揮し、戦況を有利に進めていきます。
第2クールでは、スレインの立場が大きく変化します。彼はザーツバルムを謀殺し、火星騎士の頂点に立ちます。そして、アセイラム(レムリナ)との結婚と、ヴァース帝国とは別の新たな王国を築くことを宣言します。スレインの行動は、アセイラムへの愛と、ヴァース帝国への復讐心、そして自身の野望が複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。
この頃、澤野弘之氏が手掛けた劇伴も、物語の盛り上がりをさらに高めていました。特に、OPテーマ「heavenly blue」は、作品の世界観を象徴する楽曲として、多くのファンに愛されています。
戦争の終結とそれぞれの結末
地球連合軍は、戦争に終止符を打つためにヴァース帝国の月面基地へ総攻撃をかけることを決断します。伊奈帆たちの乗る戦艦デューカリオンは、月へと向かいます。その裏では、アセイラム暗殺を目的とするアサルト部隊が月に潜入していました。
伊奈帆は、アサルト部隊に先んじてアセイラムを保護するために月面基地へ潜入しますが、アナリティカルエンジンの酷使により気を失ってしまいます。しかし、火星からやってきたクランカインがアセイラムを保護し、事態は新たな局面を迎えます。
アセイラムは、クランカインを夫とし、ヴァース帝国の女王となること、そして地球と和平を結ぶことを宣言します。この宣言により、勝ち目を失ったスレインは、伊奈帆との決着をつけるべく、月面基地から単独で出撃します。
最終決戦は、未来予測の力を使えない状況下での戦いとなりました。激しい戦いの末、スレインは伊奈帆に敗北し、捕縛されます。この決着は、多くの視聴者にとって印象的なシーンだったのではないでしょうか。
戦後の世界とそれぞれの未来
戦後、アルドノアの力は地球にも開放され、地球と火星の友好の証として「アルドノア炉」が建造されます。アセイラムはクランカインと共に地球を訪れ、炉の完成記念式典に出席します。
一方、伊奈帆は投獄されているスレインと面会します。スレインは表向きは死んだことになっていましたが、アセイラムの願いにより生かされていました。伊奈帆からそのことを聞いたスレインは、涙を流します。
物語は、アセイラムがクランカインに空の青さの理由を教えたところで幕を閉じます。このラストシーンは、平和への希望と、それぞれの未来への可能性を示唆するものと言えるでしょう。
作品全体を通して
「アルドノア・ゼロ」は、ロボットアニメとしての魅力はもちろん、複雑な人間関係や政治的な駆け引きを描いた作品です。地球と火星という二つの勢力の対立を背景に、それぞれの立場で生きる人々の姿が描かれます。
特に、伊奈帆とスレインという二人の主人公の対比は、物語の重要な要素です。冷静沈着な伊奈帆と、感情豊かで複雑なスレイン。二人の生き様は、それぞれの立場の違いを象徴していると言えるでしょう。
また、アセイラムの存在は、物語全体を通して重要な役割を果たしています。彼女の平和への願いは、物語の大きなテーマの一つであり、多くの人々の行動に影響を与えます。
放送当時、本作は様々な議論を呼びました。特に、物語の展開や一部のキャラクターの行動については、賛否両論がありました。しかし、それだけ多くの人々の心を掴み、記憶に残る作品であったと言えるでしょう。
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