特殊能力と学園生活の始まり
『Charlotte』は、P.A.WORKSが制作し、浅井義之が監督を務めた全13話のオリジナルアニメ作品です。2015年7月から9月にかけて放送され、その後OVA(特別篇)もリリースされました。原作・脚本・劇伴は麻枝准、キャラクター原案はNa-Gaが担当しており、『Angel Beats!』に続く麻枝・Na-Gaコンビのオリジナルアニメとして、放送前から大きな注目を集めていました。Keyファンのみならず、多くのアニメファンがどのような物語が展開されるのか、期待に胸を膨らませていたことでしょう。
物語の舞台は、思春期の少年少女のごく一部に不完全な特殊能力が発症する世界。主人公の乙坂有宇は、他人の体を5秒間だけ乗っ取る能力を持っていました。彼はその能力を悪用し、エセ優等生としての日々を送っていましたが、星ノ海学園生徒会の友利奈緒と高城丈士朗に見破られ、妹の歩未と共に星ノ海学園に転入することになります。
星ノ海学園は、特殊能力を持つ、あるいはその可能性のある少年少女が集められた学園。能力が消えるまで通い続けなければならず、部外者の立ち入りや外出も基本的に許されていません。能力者を実験台にしようとする科学者から守るために設立されたのです。有宇は生徒会の一員として、他の能力者たちに能力の危険性を警告する活動に協力することになります。生徒会には、人気アイドルである西森柚咲も所属しており、有宇は個性豊かな仲間たちと、奇妙ながらも楽しい日々を送ることになります。この序盤の学園生活パートは、コミカルな要素が多く、視聴者を和ませるものでした。しかし、物語は徐々にシリアスな展開へと向かっていくのです。
妹の死と真実の能力
平穏な学園生活は、有宇の妹、歩未の死によって一変します。歩未は無自覚のうちに周囲の建造物を崩壊させる「崩壊」の能力を持っていましたが、ある事件をきっかけに能力が発動し、命を落としてしまいます。妹の死によって絶望の淵に突き落とされた有宇でしたが、友利の支えによって立ち直ります。
そして、友利に連れて行かれたライブで、有宇は自身の過去と、本当の能力を思い出します。彼の本当の能力は、他人の能力を奪う「略奪」だったのです。さらに、タイムリープ能力を持つ兄、隼翼の存在も明らかにされます。このあたりから、物語は急展開を見せ始めます。妹の死、自身の過去、兄の存在、そして真実の能力。次々と明かされる事実に、視聴者は驚きを隠せなかったのではないでしょうか。当時、この急展開は大きな話題となり、「展開が早すぎる」「もっと日常パートを見たかった」といった意見も多く見られました。
タイムリープと能力の略奪
兄の隼翼は、友利や熊耳らを率いて、特殊能力者を守る活動をしているリーダーでした。「最初」の時間軸においては、その能力から研究者たちに拘束・幽閉されていましたが、歩未の能力覚醒に伴い決起した有宇によって解放されタイムリープに成功していました。その後完全に視力を失うまでタイムリープを繰り返した末、仲間とともに莫大な財を成し、星ノ海学園を作り上げたのです。
隼翼から自身の能力が「略奪」であることを知らされた有宇は、隼翼のタイムリープ能力を奪い、過去に戻って歩未を救うことを決意します。タイムリープによって過去に戻った有宇は、歩未の能力を奪い、彼女を救出することに成功します。しかし、能力者を狙う外国人組織との戦いの中で、片目を失ってしまうのです。
世界を巡る旅と記憶の喪失
再び海外テロ組織に狙われることを危惧する隼翼に対し、有宇は世界中の能力者の能力を奪い、問題を根本的に解決しようと決意します。友利は「帰ってきたら恋人になろう」と約束して彼を送り出します。有宇は海外に旅立ち、次々と能力を奪っていきますが、その代償として次第に記憶を失い、能力を集めるだけの存在へと変貌していきます。
この世界を巡る旅は、アニメならではの表現であり、ゲームでは実現が難しいと麻枝准自身も語っていました。異国の風景が描かれることで、有宇の孤独感がより際立っていたように感じます。多くの能力を奪い、記憶を失っていく有宇の姿は、視聴者に大きな衝撃を与えました。
再会とこれからの記録
ようやく目的を果たした有宇でしたが、過去の記憶を全て失っていました。再会した友利は、自ら「有宇の恋人」だと名乗り、「これから幸せな人生にしていこう」と語りかけます。記憶を失った有宇と、彼を支える友利。最終回は、切なくも温かいラストシーンで締めくくられました。
本作は、麻枝准らしい、ギャグとシリアスの緩急、そして感動的なシーンが印象的です。特に、劇中バンド「ZHIEND」の楽曲は、そのクオリティの高さから、当時大きな話題となりました。オープニングテーマ「Bravely You」は、主人公の有宇の視点で描かれ、歌詞には麻枝のメッセージや言葉遊びの要素が込められていました。また、劇中で登場する「How-Low-Hello」の曲は、キーが高く伸ばしが多用されている「麻枝節」の楽曲でした。これらの音楽も、当時を懐かしむ上で欠かせない要素でしょう。
『Charlotte』は、特殊能力を持つ少年少女たちの青春群像劇として始まり、妹の死、タイムリープ、記憶喪失といったシリアスな展開を経て、最後は温かい結末を迎えます。賛否両論はあったものの、その独特な世界観とストーリー展開は、多くの視聴者の心に残る作品となりました。
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