物語の始まりと交差する想い
物語は、高校三年生の二学期終業式の日、泉瑛太が四年ぶりに福岡から神奈川へと戻ってくるところから始まります。父親の転勤という、彼にとっては幾度目かの転校。瑛太は転校先の高校で、中学時代の親友、相馬陽斗と夏目美緒に再会します。この再会が、彼らの最後の高校生活を大きく揺さぶる出来事となっていきます。
陽斗は野球部で、最後の夏に全てを懸けていました。甲子園という夢は叶わなかったものの、彼は吹奏楽部の森川葉月に片思いをしており、告白を考えていました。一方、美緒は中学時代から陽斗に密かに想いを寄せていました。しかし、陽斗の視線は葉月に向いており、彼女の心は複雑に揺れ動きます。そこに現れた瑛太。彼もまた、中学時代から美緒に特別な感情を抱いていました。それぞれの想いが交錯し、物語は進んでいきます。
水族館での出来事をきっかけに、瑛太、陽斗、美緒、葉月、そして陸上部の乾依子はLINEグループ「えのすい」を作ります。このグループを通して、彼らの交流は深まっていきます。陽斗は初詣で葉月に告白しますが、進学で地元を離れる葉月は一度は断ります。しかし、葉月もまた、陽斗を意識し始めており、お互いの生活が落ち着いたら付き合いたいと告白します。この展開は、当時の視聴者にとって、もどかしくも微笑ましいシーンの一つだったのではないでしょうか。
それぞれの進路と恋の行方
瑛太は写真部の小宮恵那につきまとわれます。恵那は写真部存続のため、瑛太の写真をコンクールに出品しようとしていました。しかし、次第に瑛太自身に惹かれていき、コンクールで金賞を取ったら告白すると宣言します。自由奔放な恵那と、どこか達観した雰囲気を持つ瑛太の掛け合いは、物語に軽妙なリズムを与えていました。
美緒は中学時代から陽斗への片思いを引きずっていましたが、ある出来事をきっかけに、その想いに区切りをつけます。大雪のセンター試験の日、駅で足止めされていた美緒を瑛太が会場まで送り届けます。この出来事をきっかけに、美緒は瑛太を意識するようになります。彼女は第一志望校を瑛太の推薦入学する大学に変更し、合格したら想いを伝えようと決意します。
瑛太もまた、美緒を密かに想っていました。彼は美緒の第一志望の大学に合格したら想いを伝えようと決めていましたが、受験の結果は不合格でした。恵那には他に好きな人がいると告げ、高校を卒業します。この切ない結末は、当時の視聴者の間で様々な議論を呼びました。
湘南の風景とリアルな描写
本作の舞台は神奈川県湘南地域です。江の島や鎌倉など、実在する場所が数多く登場し、その風景描写は非常に丁寧に描かれていました。湘南モノレールやビックカメラが背景制作に協力していたことも、当時の話題の一つでした。これらの風景描写は、物語の舞台となる高校生たちの日常を彩り、作品にリアリティを与えていました。
特に、受験や進路といった高校生にとって身近なテーマが描かれていたことは、本作の特徴の一つです。将来への不安や、友人との別れなど、誰もが経験するであろう感情が丁寧に描かれており、視聴者の共感を呼びました。こうしたリアルな描写は、本作が単なる恋愛アニメに留まらない、青春群像劇としての魅力を高めていました。
やなぎなぎの音楽と彩られた世界
本作の音楽は、やなぎなぎがプロデュースを担当しました。オープニングテーマ「over and over」は、爽やかで疾走感のある楽曲で、物語の始まりを彩りました。エンディングテーマ「behind」は、夏目美緒、森川葉月、小宮恵那の3人が歌唱しており、それぞれの心情を表現した歌詞と、切ないメロディーが印象的でした。
やなぎなぎの音楽は、本作の世界観をより一層魅力的なものにしていました。劇中音楽もまた、繊細な感情の機微を描き出すのに貢献しており、物語に深みを与えていました。これらの楽曲は、放送当時から現在に至るまで、多くのファンに愛されています。
それぞれの未来と再会
物語の終盤、それぞれの進路が決まり、卒業式を迎えます。瑛太は受験に失敗し、美緒は第一志望の大学に合格します。恵那は写真部存続の報告を瑛太にし、手作りの卒業アルバムを渡します。陽斗は就職が決まり、葉月は大学に進学します。それぞれの道を進む彼らの姿は、少し大人びて見えました。
春、大学生になった瑛太の前に、美緒が同じ大学の学生として現れます。彼らはようやくお互いの気持ちを打ち明け、物語は幕を閉じます。紆余曲折を経て、最終的に結ばれた瑛太と美緒。この結末は、多くの視聴者に安堵感と温かい気持ちを与えたのではないでしょうか。本作は、高校生たちの等身大の恋愛模様を描いた、心に残る作品として、今も多くの人に記憶されています。
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